ゴーが来てくれて、引越し関係の雑事を片付け。
夕方、三人で柏の「やまん」へ、晩飯を食いに出ます。
先日わめいた「野菜と大豆しか食わない宣言」は、もちろん一時停止。
「やまん」で魚を食わないとか、ヒャクパーありえない(`・ω・´)
六時前くらいに店へ入ると、店主Sくんがいつもの笑顔。
カウンターに三人並び、Sくんの奥さんと娘さんにご挨拶。
奥さん美人だし、娘さんは可愛いし、Sくんは穏やかに微笑んでるし。
ホント、ほっとする空間です。
つわけで、それじゃあ早速、美味い酒と料理をいただきましょう。
生ビール(下戸のゴーは烏龍茶)でカンパイしたら、まずはつきだし。
紫イモとサバのポテトサラダ。
紫色ですが、サツマイモじゃなくてジャガイモです。味もジャガイモ。
S君いわく、「色が面白かったけど、味は普通です」とのことで。
確かに色から想像するような、甘さはありません。
が、そんなことより問題は、「一緒に練りこんだサバ」ですよ。
俺はポテトサラダ好きじゃないんですが、これは完全に別物。
生臭さは一切なく、サバの旨味とジャガイモのねっとりほくほく感。
丼に盛れば、一食として成立しますね。
ゴーとナオミも、うれしそうに食べてます。
隣の席のおじさんと、バカ話しながら飲んでると。
車えびのカラアゲ。
小さめの車えびをカラっと揚げてあり、上品な仕上がり。
もちろん、見てわかるとおり、美味いに決まってます。
シャクシャクとエビを食いながら呑む酒の美味さったらもう。
と、ここでナオミが、変わった「霧島」を発見します。
茜(あかね)霧島。
霧島酒造の新作で、芋焼酎なんですがフルーティな香り。
これは各人で、評価が分かれました。
ナオミ 「美味しいけどイモっぽくないし、そんな好きじゃない」
俺 「さっぱりしててイモっぽくないけど、呑みやすくて美味い」
ゴー 「アルコールの匂いしかしない」
俺 「ぎゃははは! そら、呑まないヤツはそうだよな」
芋焼酎というより、フルーツフレーバーの甲類って感じかな。
むしろ芋焼酎が苦手なひとの方が、楽しんで飲めるかも。
と、茜霧島談義をしていると。
桜納豆がやってきまして、写真撮り忘れて食っちゃいました。
「桜」ですから、もちろん「馬肉」です。
要は「馬刺しの納豆和え」なんですが、これがまた酒のすすむ逸品でして。
食べながら、Sくんの「熊本馬肉事情」を聞き、へぇへぇへぇの連発。
カウンターに並んでたおじさんも九州のひとで、イヤでも話が盛り上がり。
驚かされ、大笑いしながら、美味しい料理に舌鼓。
昼間、「マックのポテトが食いてぇ」とほざいてた俺用に。
ナオミがフライドポテトを注文してくれたんですが。
これももちろん、「やまん」らしい「仕事」がしてあります。
フライドポテトのアンチョビソース。
「じゃがいもと魚」ってコトでは、つきだしのポテサラと同じですが。
当然、味はまた別の楽しさにあふれてます。
カラッとあがったフライドポテトに、アンチョビとオイル。
ほくほくのじゃがいもに、アンチョビの旨味や塩っ気が驚くほど合います。
普通のポテトだと思って食った瞬間、思わず叫びました。
「うぉ、これアンチョビだ! すげぇ、超ぉ美味めぇ!」
それを聞いたゴーとナオミが、顔を見合わせて苦笑しつつ。
指差したメニューには、ちゃんと「アンチョビ」って書いてありました。
いや、俺が注文したんじゃねぇんだから、知らねぇっつの(´・ω・`)
ぶーたれつつ、二杯目の焼酎、「天狗桜」をぐびり。
さて、メインと言っていいでしょう、逸品が登場しました。
マグロカマのリブステーキ。
じっくりと焼いた旨味たっぷりのマグロカマ。
その下に敷かれるのは、リブソース。
まず、そのまま塩焼きのマグロカマを食いまして。
「美味めぇ! リブソースとか要らねぇじゃん!」
ニコニコしながらマグロと焼酎を楽しみます。
で、せっかくだからと、今度はソースをつけますと。
これがまた、合うんですよ。
Sくんの仕事なんだから当たり前だけど。
さっきまでのマグロが、まるで別の食い物になります。
「どっちも美味めぇ! ふたつ頼みゃよかった!」
意地汚いことを叫びながら、食っちゃ呑み、食っちゃ呑み。
塩焼きマグロ→焼酎→リブソースマグロ→焼酎→塩焼きマグロ……
止まる訳がない(´・ω・`)
途中でやってきた、鶏のたたき。
充分以上に美味しく、どこになんの文句もないんですが。
Sくんが仕事をした「魚料理が美味すぎて」、影が薄いです。
他の店で食ったら、普通に「美味い」って評価したでしょうに。
「やまん」は、ある意味、とても危険な店なのです。
さて、そろそろシメを食べますか。
ぶらい庵にもあった(Sくんは、元、ぶらい庵の料理長)アレ食おう。
やっぱ、シメはあぶらソーメンがいいよねぇ。
名前は脂っこそうだけど、にぼしダシのさっぱりしたソーメンは最高。
と、ナオミとゴーが、「これも食べたい」と言い出したのが。
鰻(うなぎ)のサネン蒸し。
ひつまぶしを、サネンと呼ばれる月桃(げっとう)の葉で包んで蒸したモノ。
じゃあ、それとあぶらソーメンを……
「冷汁(ひやじる)ありますよ」
もともと好きな冷汁の、しかもSくんがすすめてくれたもの。
そらあ、いただきますよ。
つわけで、サネン蒸しと冷汁をオーダー。
雑談しながら待ってると、やあやあ、やってきました。
鰻のサネン蒸し。
月桃(げっとう)ってのは、台湾の植物らしいです。
んで、それが海を渡って、沖縄や小笠原でも使われてると。
この月桃の葉が、実にやさしい香りでして。
ひつまぶしにある、わずかなウナギくささ(ってほど匂いませんが)を、
カンペキに消し去って、でも、味の邪魔はしない。
どっちかって言うとワイルドなはずのひつまぶしが、とても上品に仕上がって。
「やべぇ、美味めぇ」を連発しつつ、月桃の香りとウナギの味を楽しみ。
かなり幸せモードなところへ、トドメの一発。
「やまん」の特製「冷汁(ひやじる)」です。
まず、今、あなたの頭に浮かんだ、「冷汁のイメージ」を捨てましょう。
いや、イクラ以外の基本材料は、そのままでいいです。
ただ、かかる「手間が100倍になってる」だけなんです。
やまん流は、まず味噌汁を作ります。
もちろんSくんの味噌汁ですから、それだけでも美味いでしょう。
で、できた味噌汁を、冷やしつつ放置しまして……
その味噌汁の「上澄み」だけを使って、冷汁を作るんです。
味噌の味や風味はしっかり残りつつ、上澄みの透明感がこの色の秘密。
ゆえに郷土料理のもつ「いい意味での泥臭さ」的な良さは薄れますが。
それを補って余りある、さっぱりした上品さと、優しい風味。
むしろ、イクラがちょっと強すぎるかな、と感じるくらい。
Sくんの人柄そのままの、淡く優しく、でも奥にしっかりした出汁の味。
鯛茶漬けとか、ああいう上品な出汁のきいたお茶漬けあるでしょ?
割烹で出るようなアレと、遜色ないつーか、俺はコッチのが好き。
そして、食べ終わった後にふわっと香る、味噌の風味。
思わず、ため息が漏れます。
三人で分けて食べたんですが、どんぶり一杯なんか秒殺。
ひとり一杯でも、まるっきし問題ないでしょう。
ランチでこれが出てたら、二日に一回食いに行きますよ俺。
つわけで早速、仕事ぶりを賞賛しつつ、質問します。
「上澄み? 味噌汁が澄むまで、すげぇ時間掛かるんじゃないの?」
「仕込みの始めに作って、味噌や出汁の材料が沈むのを待つんですよ」
「うわ、そりゃまた、手間も時間も掛かるねぇ」
「美味しいでしょう?」
こともなげに微笑むSくんの背中には、後光が射して見えました。
本当のプロの料理を、満足いくまで堪能した我々は。
膨れたおなかをさすりつつ、雨にもかかわらずニコニコで。
幸せな気分にひたりながら、家路に付いたのでした。
柏で魚が食いたいなら、「やまん」で間違いないつーか確定ですよ。
あー、あんなに食ったのに、今朝になったらもう、食いたい(´▽`)