客商売の心得のひとつに「野球と政治の話をするな」てのがあります。
水商売なんかでもそうでしょうが、整骨院でもやはり同じで、野球と政治の話はアツくなりすぎて、お客さん（患者さん）が喧嘩しかねないからです。ま、ＷＢＣみたいに日本代表と世界ってコトであれば、問題はなさそうですが。
小学校のときクラスの連中とやった草野球で、ホースアウトてなルールを知らずに、ボールを取ってベースを踏まないで一塁に投げたら文句を言われて、自軍のメンバーと乱闘事件。中学ではバスケット部で乱闘事件。（【神々】のエッセイ「柔道がくれたもの」に収録）
てな感じで、俺にとって球技＝格闘技。
そんなステキ経験のおかげで、ビタイチ球技に興味を持てない俺はＷＣＢとかどうでもいいんですが、患者さんはもちろんそうでもなく、治療に来てたおじいちゃんが言うんですよ。
「先生、音楽じゃなくて野球聞こうよ」
普段からウチの整骨院ではＦＭラジオをつけてるんですが、それを野球の中継にしろつーわけですよ。でも、野球中継なんて入れたら、ヒマなじいさん連中が帰るわけがない。
それはゴメンだと思った俺は、やんわりと断ります。
「や、野球はみんなアツくなるから、ケンカになっちゃうんだよね。だからダメ」
するとじいちゃん、納得したように大きくクビを縦に振りながら
「そうだよなぁ。一度ずらすとわかんなくなるもんなぁ」
「え？ なにが？」
「だから、ラジオ局がさ。いいわ、家に帰ってから見るよ」
ちょ、まて。俺はそこまでメカに弱くない。
