え〜久しぶりに仕事して、ボロ雑巾のようになっているかみです、こんばんは。ゴールデンウイークじゃなかった人は聞きたくない話ですね、ごめんなさい。
休み中、まこと(整骨院の若い衆)が、水槽の水替えをやってくれていた話は先日しましたが、やっぱね、世の中そう甘くはないですわ。
まことが学校に行ってしまって、夕方から一人で仕事してるわけですが、久しぶりの仕事にヒーヒー言っている俺に向かって、患者さんが不審そうに言うんです。
「先生、金魚死んじゃったの?」
「なにが? まことが世話してくれたから、そんなことないと思うけど?」
「でも、スッポンモドキの水槽、なんだか金魚が少ないよ?」
なに? とあわてて水槽を見ますってえと、確かにたくさんいた金魚が五匹しかいません。ありゃ? いったいどうしたことだ?
治療が終わってから、水槽に近づいてみます。
ん? なにやら、黒い小魚が……
やりやがった。
もう、お分かりですね?
あの馬鹿(27歳学生イタズラ好き)が殊勝にも水槽の水替えなんてめんどくさい仕事を自分から進んでやった時点で、気づいてもよかったんですが、俺は彼の心意気に打たれて、瞳を曇らせてしまっていたようです。
ものすげ無駄に、ものすげ元気に泳いでいらっしゃいますよ。
二匹も。
ピラニアの幼魚が。
自分より大きい金魚をしこたま食べて、えらくご機嫌の様子。もね、怒るとかあきれるとかの前に、子供のいたずらを発見した父親の気分ですね。
きっとあいつ俺が気づくのを、心の中でニヤニヤしながら待っていたんでしょう。かわいいもんです。かわいくない。
「まったく、あの馬鹿。おかしいと思ったら、やっぱりやらかしてやがった。ったく、スッポンモドキ齧られたら、どうする気だよ」
「先生、スッポンモドキ齧られちゃうんですか? かわいそうですね」
患者の若夫婦が眉をひそめます。
「そうだね。でも、コロソマ(これもピラニアの仲間)のところでも齧られちゃうし、なまずのところじゃあ、なまずにエサ取られておなかすかしちゃうだろうし、どうしたもんかなぁ……」
と答えながら腕を組んで、水槽に入れる組み合わせを思案していると、若夫婦、目をきらきらさせながら
「じゃあ、水槽もう一つ増やさなきゃならないですね?」
なるほど、その手があったか!
ねえよ。