笑ってる?

創作サイト【神々】の日記

スナイパーの憂鬱

入院だ、年末だで、すっかり忘れてたんですが。
月末じゃないですか。レセプト(保険請求)だってのに、すっかりまったく、何の準備もしてませんよ。
 
いっそのこと、今月分は来月と一緒にとか思ったんですが、来月、今の俺に烈火のごとく怒りをぶつけてる絵が見えてるので、今月分は、今月やることにします。あたりまえ。
 
 
まこと(整骨院の若い衆)の学校も休みに入りまして、夕方の仕事が格段に楽になりました。いつもなら、待合に何人か待たせながら、ひいひい言ってるはずが、処理能力がいきなり200%ですからね。
 
やけに待合がすいてて、それはそれで寂しい。
 
なんて思うスキもなく、ちょっと暇をもてあますと、目を離しちゃいけない小僧が、いろいろとやらかし始めます。ま、小僧ったって、まことのヤロウも来月には28なんですが。やー歳喰うはずだよ。
 
「まこと、おまえ今なにやってた?」
「何もしてませんよー」
「ウソつけ。何を後ろに隠した?」
「いや、水槽が汚れてたから、掃除しようと思ったんです」
「ほほう、消毒用アルコールか。わかった、それはまあ、よしとしよう。だがな、反対の手に持っている、それは何だ?」
「100円ライター?」
「俺に聞くな。てめえ、水槽の水の上にアルコール流して、火ぃつけようとしやがったな?」
「それは、誤解ですよー」
「いいや、理解だね。断言する。いいから、おとなしくしてろ」
「はぁ〜い」
 
しばらくすると、突然、待合のほうで「ばしゅっ!」とか、きな臭い音がします。
 
「まーこーとー!」
「違いますよ、今、ゴキブリがいたんです。先生、ゴキブリ嫌いじゃないですか? だから、先生のために僕ちんが、一生懸命……」
「スリングショット(強力なパチンコ)で、打ち落としてたってのか? ゴキブリがいた? この寒空に? まったく、おめーは放っておくとロクなことしねえな……て、あー! おめー! すだれに穴あくから、やめろ! 撃つな!」
「もー! 文句ばっかりだ」
「ああ、言わせてもらうよ! 言わいでか! スリングは危ないから、やっちゃだめ!」
「えー! じゃあ、おもてならいいですか?」
「もっとダメだ。隣の家のガラスとか割られた日にゃ、整骨院、移転しなくちゃならんだろうが」
「じゃ、ティッシュティッシュならいいですか?」
「ダメ。証拠が残る」
「じゃ、氷。氷ならいいでしょう?」
「なんでそんなに撃ちたがるんだよ」
「男の本能です」
「ち、無駄に堂々としやがって。しかし、まあ、確かにパチンコには、男心をひきつけるものがあるな」
「お、乗ってきた。だから、先生、好きですよ」
「気味の悪いこと言うな。つーかよ、氷じゃつまらねえだろう? そのわりに実害が大きい。リスクが高すぎる」
「なら、なんならいいんですか?」
 
俺は、冷蔵庫から、ピザを頼んだときについてきた、ケチャップの袋を取り出す。
 
「これだ。実害が少ない割りに、見た目が派手だろう?」
「きゃはははは! やっべ、超ぉ、おもしれー! やりましょう!」
「最初は俺だからな?」
「ずりー!」
 
ケチャップの小袋は大きすぎて、うまく飛びませんでした。小袋のクセに。
がっかりしながら、ふたりは整骨院の中に戻ります。
 
「う〜ん、あれでも大きすぎるのか。そうだ、まこと! ガムテープにさ、ケチャップをつめて、ラビオリみたいに、四方だけ止めて、専用の弾丸作ろうぜ?」
「う〜ん、それもいいですけど……そうだ! お任せください。木曜日、面白いもの持ってきますよ。も、おめー、ぜってーそれはありえないってヤツ」
「何だ?」
「秘密」
 
 
 
今週中に、うちの整骨院、つぶれるかも知ンない。