ちと、レセで忙しいんで、入院中の話でお茶を濁そうと思います。
強烈な寝言を言う隣のベッドのオヤジ。
初日の夜、いきなり夜中にしゃべりだすンですよ。電話してるのかと思ったら、ぶつぶつと独り言らしい。あんまりうるさいんで、「黙れ」言ったけど黙らない。
「黙れよ、うるせえから」
まだ、ぶつぶつ。
「だ・ま・れ」
低い声で、強めに言うとやっと黙りました。
次の日、またなんか言っている。こりねえヤロウだなぁ、思っていると、今日は、はっきりとナニ言ってるか聞き取れた。
「あなたは、ガンです。私もガンです。いっしょに死にましょう。むにゃむにゃ」
ここではじめて、俺は、「寝言」というものの存在を思い出しまして。いや、あまりにも(寝言にしては)滑舌がよかったので、まさか寝言だとは思わなかったンですよ。
う〜む、彼もいろいろなストレスがたまっているのだろうな。
そう思いながら、俺はカーテン越しに割とやさしい口調で言いました。
「おじさん、ここは整形外科病室だよ。ガンじゃねえから安心しな」
おじさん、むにゃむにゃ言いながら小さい声で
「ありがとうございます」
わりとカワイイ(笑
とか思ってたら、次の日の夜。
「や〜ま〜ご〜やの〜」
ものすげえでかい声で、歌いだしやがります。
山小屋とか、何の歌だ、それ?
とりあえず、なんだぁ? と飛び起きたら、その後、明らかに怒り口調で、何事かわめきだします。
「おい、いいか? 自分に自信を持ちなさいよ! いいと思ったら、誰が何を言っても聞くんじゃないよ。信じたとおりにやればいいんだよ。何をぐずぐずしてるんだ!」
でも、やっぱし最後のほうがむにゃむにゃ言いながら、静かになる。
山小屋で、いったい誰に、何について説教してるのか、すごく気になるところですが、それはともかく、こんなにはっきりと寝言を言うんじゃ、こいつ、隠し事とかできないだろうなぁ。
なんて思ったりしたわけですが、しかし、何の話かも誰に説教してるのかもカイモクわかんないけど、言ってることが比較的、俺好みなことは間違いないです。
いや、うるせえのも、間違いないンだけど。