笑ってる?

創作サイト【神々】の日記

時には真面目な話を

たとえば腰痛が我慢できなくなって。
医者に行って、椎間板ヘルニアだと言われたとします。そこで治療して、半年たっても治らず、痛くて辛いので別の病院にいくとします。
ところがそこでは、脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)なんて聞いた事のない難しい病名を付けられます。なんだか怖くなってネットで調べてみると、専門用語が多かったり、言っている事がまちまちで、判然としません。
それを繰り返すうち、痛みが強くなったり弱くなったりします。弱いときはごまかしごまかし仕事して、強いときには病院でブロック注射や痛み止めをしてもらいます。
医師からは安静にするように言われますが、仕事が忙しくてなかなかそうもできません。
だから治らないのだろうなぁと半分あきらめ、悟りの境地になりつつも、痛みが強くなればそうも言っていられず、薬、運動療法、良いと聞いた事はすべて試してみます。
やがて痛みに耐え、何もしないでいる状態が長くなり、神経が疲れてきます。
そんな状況に耐え切れず、一縷の望みにすがって手術をしたりするのですが、多少の軽減があったのは最初だけで、やがて同じような痛み、痺れが戻ってきます。
こうしてこのヒトは、専門家顔負けの知識を持っているのに、延々と腰痛と付き合わなければならない、慢性腰痛持ちとなるのですが。
 
こう言う事は、頻繁に起こるんですよ。
ものすげえ巷にあふれているように勘違いされてますが、実際に本当の椎間板ヘルニアだったり、脊柱管狭窄症だったりするヒトは、ほとんどいないと思って良いです。
ヘルニアってのはラテン語で飛び出るって意味なんですが、実際に髄核(椎間板の真ん中にある核)が飛び出して神経に触ってるヒトなんて、ヘルニアと言われたヒトの何%でもないです。
そしてわりと重要なことなんですが、ヘルニアや狭窄症での痛みと、腰に感じてる痛みは、ほとんどの場合、直接的な因果関係はありません。
1911年に椎間板の突出が坐骨神経痛を引き起こしていると考えられて以降、このメカニズムが非常に合理的だと思われ、その後のスタンダードな考え方になりました。
しかし、そこまで信じられているのもかかわらず、患者さんだけでなく、俺も含めた現代の治療家で、この因果関係を実感として納得できたヒトは少ないはずです。
90年に入ってから、筋・筋膜性疼痛症候群といわれるようになった腰痛や肩こりの鑑別診断に、実は上記のヘルニア、狭窄症などのいわゆる「神経根症状」と言うものは入っていません。
つまり、そんなものの有る無しと腰痛は関係ないということです。
いくつかある考え方のひとつに、筋肉に痛みを感じさせる物質が発生するメカニズムを第一現場、脳が痛みを感じるメカニズムを第二現場とし、その両面から治療するいうのがあります。
痛みを筋・筋膜性疼痛症候群の治療と、それを感じる脳、つまりメンタルケアに分け、それぞれに治療を施すという考え方です。この考え方は、少なくとも俺には、イチバン現状に即していると感じられます。
実際に結果も出ています。
俺はダチのZに「筋肉フェチ」とか冗談でからかわれるくらい、腰痛や肩こりの治療の際に、筋肉の話をし、筋肉の硬結や拘縮を取ってゆけば改善する、と言い続けてます。
そして実際に、ヘルニアや脊柱管狭窄症で治らないと言われたヒトが何人も、治癒もしくは症状軽減に向かっています。
そんな現場サイドからの評価としては、神経根的な考え方よりも、筋・筋膜性疼痛症候群的な考え方のほうが、より現実に即し、実践的だと感じられます。
さらに言えば、長く辛い思いをしているヒトは、おおくが精神的に疲労している場合もあり、そこに対するケアもすごく重要だと考えられます。
無論、俺は医師ではありませんから、抗鬱剤の処方などはできませんが、患者さんが納得いくまできちんとコミュニケートする、いわゆるインフォームドコンセントだけは、意識して時間をかけています。
その結果、明らかに筋・筋膜性の症状が残っているにもかかわらず、体感的には治癒したとさえ言い出す患者さんもいるほどです。
「病は気から」の論理的説明と実践ですね。
 
この手の理論というのは、昔なら専門誌を読まなければ、(英語やドイツ語が読めなければ)なかなか知る機会がありませんでした。最新であればあるほど。
ところが、今ではインターネットで簡単に探し、読むことができます。
そしてこんなに簡単に最新の情報が入ってくる状況なのにもかかわらず、それを知らないドクターや治療家がいると言うのが、悲しいながら現状なのです。
また逆に、患者さん側の話だと、せっかくいろんな知識を蓄えているのに、基礎的な知識が欠けているため、その良否が判別できません。結果に依るしかないわけです。
そして結果が出なければ、やがてどんな理論も胡散臭く感じられてしまい、最終的には鬱など心の病の方に移行してしまう患者さんが多いと言うのも、悲しいながら現実です。
 
治療サイドは常にアンテナを高くし、尚且つ、患者さん側に立った治療を行う。患者サイドも自分の疾患に対する知識を蓄え、解らないことは調べ、聞く。
そして納得するまで、治療側とディスカッションする。そうすることで、無駄な治療に半年や一年、場合によっては数年も費やすことが避けられます。
しかも、社会的にも大きなメリットがあります。膨大に膨れ上がってきた医療費を、不満のない形で節減できるチャンスになるのですから。
 
なんか、最後には社会的な問題にまで発展してしまいましたが、たまにこんな風にまじめに考え、俺の治療家としての立ち位置を確認することは、大切なんじゃないかなと思ってます。
俺を信頼してくれている患者さんたちへの、俺なりの責任を果たせると思うからです。もちろん結果を出すことが、信頼に応える最良の方法ですけどね。
 
面倒な書類仕事も終わったし、さて、治すぞっ!v(^0^)