笑ってる?

創作サイト【神々】の日記

SPT レーズナー

俺の名はエイジ。
SPT-01だ。
そう、皇帝陛下直属の部隊であるSPTの01、つまり俺が最高、最強のSPTなのだ。銀河帝国初代皇帝かみ陛下は、世の不正や不公平と戦うために、数々の斬新な政策を行われた。
そしてそのほとんど全てが、人々の暮らしを改善し、人々を幸せにした。だが、そんな皇帝陛下も、たった一つだけご自分のワガママをおっしゃられたことがある。
いや、大丈夫、心配するな。不敬罪にはあたらない。
なぜなら、陛下ご自身が
 
「これは余のワガママである。この世界の全てをよくするために、余は余の持てる全力を尽くすつもりだ。だからその代償として、たった一つのことだけを、卿(けい)らに強制する」
 
とおっしゃられているのだから。
 
「この強制が気に入らなければ、余を打倒し、他の皇帝を据えるなり、民主共和制に移行するなり、好きにすればよかろう。余は、余の善政を持って、この唯一の強制にわびるつもりである」
 
とさえも。
そして人々は、かみ皇帝陛下の布(し)く平等で(場合によっては陛下ご自身も含めて!)、安全で、豊かな政策のもと、幸せに暮らす道を選んだ。たった一つのわがままを受け入れることで。
その陛下のわがままを、人々に遵守させることが、我々SPT〜スペシャル・ポリス・オヴ・テイスト〜の、唯一にして絶対の任務なのである。
我々は、その任務の遂行に当たって、殺人さえ許可されている。
ふふふ、そうおびえるな。何もお前を殺そうと言うわけではない。ただ、言うことには従ってもらう。お前だって、陛下のなさるすばらしい政治のおかげで、安全で幸せに暮らせているのだ。
ならば、陛下との約束どおり、その唯一のわがままだけは受け入れる義務がある。
わかるな?
わかったら、
 
 
 
 
 
 
 
ドライカレーには、必ずレーズンを入れろ!
 
なに? レーズンがない?
大丈夫だ、安心しろ。
我々、SPT(味(テイスト)を守るスペシャルポリス)、レーズナーは、その名前のとおり、いつもレーズンを持ち歩いているのだ。ほら、最高級レーズンだ。そのドライカレーに入れるんだ。
な?
辛さの中に、ときどき不意に訪れるやさしい甘さ。
最高だろう?
ドライカレーとレーズンは、決して切り離せないものなんだって事が、どうやら理解できたようだな? わかってくれれば、何よりだ。俺もうれしいよ。さて、それじゃ次の仕事に行かなくちゃ。
え? なんだって? そうだよ。お隣に行くんだ。お隣は今日、酢豚だろ? だから、酢豚にパイナップルを入れるなんて大犯罪が行われないように、チェックしに行くのさ。
 
 
と言うわけで、みんなもドライカレーにはレーズンを入れるんだ。
いいか? 必ずだ!