笑ってる?

創作サイト【神々】の日記

悪夢

昼休みはいつも昼寝してるんですが。
暖房かけて毛布をかぶって寝てたんですよ、この間。
んで、夢を見まして。
 
よく晴れた日。
俺は、ランツァにまたがって走り出した。
バーバーンと2サイクル特有の排気音を断続的に響かせて、ランツァは小気味よく加速してゆく。とにかく国道に出なくては。俺は若干の焦りとともに、ヘルメットの中でそうつぶやいた。
なぜ焦る必要があるのか、なんて考える余裕もない。
とにかく、今走ってる場所の東西さえ、よくわからないのだ。珍しいことに、今日は地図を持ってきてない。しまった、地図がないぞ、と焦りばかりが加速してゆく。
体調はいいし、ランツァの調子も申し分ない。思ったとおり、いや、それ以上に気持ちよく単車を操ることが出来るのに、しかし、なんだか俺の気は晴れない。
とにかく、国道に出なくては。
 
やがて、ようやく国道を見つけた俺は、ほっとため息をついて走り出す。しばらく走るうちに、国道は大きな街の中へ入っていった。コンビニ、駅、さらに大きなビルが乱立する場所へ出る。
どうやらココは東京だろうか。
すると、突然、横にいたマルが銀行の前に単車を止めた。
いつの間にマルが来たのか、なんて考える必要はない。俺の心が納得しているのだから、それでいいのだ。それよりも、これから俺たちがやる大仕事を思って、手のひらににじむ汗をオフロードウエアでぬぐう。
マルは俺を振り返ってうなずいた。
俺もうなずき返して、銀行の裏手に回る。警備員をやり過ごすと、銀行の裏口から金庫室へ向かった。金庫室にいた警備員を脅かして鍵を開けさせると、縛り上げてしまう。ココまでは手際よく行った。
現金の入ったトランクを確認すると、それを運び出して単車のリアキャリアに積む。それから銀行の前に行くと、マルが銀行の中で暴れているのが見えた。陽動にしてもやりすぎだ。
俺は苦笑しながらマルに叫ぶ。
「マル、急げ!」
その声が聞こえたマルは、あわてて自分のXTに飛びのると、俺と並んで逃げ出した。
 
国道から途中で枝道に入り、山道を進んでゆく。追っ手など見えないのに、俺は焦ってランツァを飛ばす。マルが少しのんびりしようと言うのにも焦りを感じ、ゴネるヤツを説得して、ひたすら山道を逃げる。
やがて目の前に廃屋のような家が見えた。近くの林に単車を隠し、その家に近づく。すると中には、老夫婦と、その息子夫婦だろう、俺より少し年上の男女がいた。
俺は満面の笑みを浮かべて、
「少し休憩させてくれないですか」
すると老夫婦は、
「もうすぐ暗くなるから、泊まって行けばいい」
と言ってくれた。
しかし、先を急ぎたい。俺はその申し出を断ろうとした。
だが、横からマルが口を挟んで、結局、泊まってゆく事になる。俺は内心舌打ちをしながら、ここでもめては彼らに怪しまれてしまうと、なぜだか心の底からそう思えたので、おとなしく従った。
 
囲炉裏のある部屋で、マルがうれしそうにけんちん汁を食っているのを見ながら、ふと不安を覚えた俺は、家の裏口を探す。裏口はすぐに見つかったが、数字錠がかかっている。
家人に見つからないように息を潜め、焦りから来る脂汗を何度もぬぐいながら、ようやくカギを外すことに成功した。そっと裏口からを戸に出ると、俺は単車までの道のりを確認する。
すると、玄関あたりがやけに騒がしくなった。
(なんだ? 警察か?)
窓から中をのぞくと、はたして、警察官が数人と刑事らしき男たちが部屋の中で家人やマルと話している。俺はそうっと様子を伺っていた。すると、後の方から小さな明かりが俺を照らす。
懐中電灯を持ったその人物は制服警官だった。
彼が何事か言う前に、俺は口を開いた。
「あぁ、腰が痛てぇ」
かがんで窓から中をうかがっていた不自然な姿勢を、ごまかそうとしたのだ。それからキっと警官に向き直り、逆切れ気味に声を荒げる。
「もう、ハラが減ってしょうがない。コレ、いつまで続くんだ?」
「あれが終わったら、帰りますよ」
優しく諭す警官に指差され家の中を見ると、まさに、マルが指紋を取られているところだった。ヤバい。しかし、マルが捕まれば、俺だけ逃げてもすぐに捕まるだろう。
何とかマルと一緒にバイクのところまで行かなくては。
どうする? どんな手がある?
俺はニコニコと笑う警官の前で、ダラダラと脂汗を流し続けた。
 
 
ここで目が覚めたわけです。
んで、起き上がってみたら、寝汗がハンパじゃないんですよ。
そこで一瞬にして理解しました。
 
悪夢だから汗をかくんじゃなくて、
汗をかいてるから悪夢を見る
んですね、きっと。
 
とりあえず、マルが銀行強盗するつったら止めようと思います。