笑ってる?

創作サイト【神々】の日記

悪魔の囁(ささや)き

患者さんで、若い男の子がいるんです。
若いつっても、28だったかな? 結婚してて子供もいるんですが。んで、その彼が今日、整骨院で苦笑いしながら言うんですよ。
 
「クルマに女の子乗っけて遊びに行ったら、助手席に長い髪が落ちてて、それを昨日、嫁さんが見つけて切れちゃったんスよ。嫁さん、ショートなのに。いやー大変です」
「謝ったん?」
「いや、黙ってシカトして寝ました。今日、仕事だったんで」
「へぇ、そうなのか。んで、髪の毛ってどんなの?」
「普通に黒くて長い髪ですけど。なんでです?」
「だーらよ、黒髪で30cmくらいならごまかしようがあるじゃん?」
「へ?」
「俺だ、俺。俺を乗っけたことにすればいいじゃん」
 
その瞬間の彼の顔の輝きようったら、砂漠でオアシスつーか、九死に一生つーか、地獄に仏ってのを顔にしたらきっとこうなるんだろう的な救われっぷり。
 
「おぉ! 先生、超あったまいー! 今日帰ったら、早速、それ言ってみます」
「切れたり、怒ったりしないで言えよ? 淡々と『そんなことするわけねぇだろう。ばかばかしすぎて腹も立たないよ』的な感じでな」
「了解です。先生、あざーっす!」
 
彼は知らない。
俺が鬼のように忘れっぽいことを。
 
 
ま、口裏合わせるのは忘れないにしても、もっと大事なことを忘れそうですね。さっきも、風呂入ってアタマ洗いながら、
「あーも、じゃまくせぇなぁ。そろそろ坊主にしちまうか
って、上の話をカンペキに忘れて本気で思ってましたし。
 
ま、悪いことはできないって話です(邪笑)