笑ってる?

創作サイト【神々】の日記

God Speed

今日、男がひとり旅に出た。
自己主張が強い単車乗りと言う人種を、その強烈な走りの輝きで魅了し、納得させてしまう男だ。穏やかに笑い、あるいはガキのように憤り、老獪な策士と純粋な子供がその中に同居する、不思議な男だ。
氷の冷たさと、炎の熱さを併せ持つ、繊細にして強靭な男だ。
 
妥協しようと思えば充分に妥協できるだろう状況から、いや、ヒトによっては成功とさえ言ってもいいだろう状況から、ヤツはさらに上を目指した。手にしたものを放り投げることなく、大切に抱きしめ、あるいはきちんとけじめをつけて手放し、あいつは新世界へ向かって漕ぎ出した。
 
ヤツのために俺ができることは何だろう。
疑問が浮かんだとき、すでに答えは出ていた。
 
走れ!
目指す先へ、そのしなやかな体躯を駆って。
求める自分の姿へ、その折れることのない強靭な意思で。
誰でもない、自分自身の笑顔のために。
  
俺は、俺にできることをする。
飲んだくれ、走り、人と人とをつなぎながら。
ひょいっと顔を出すおまえのために、最高の宴を用意しておく。
 
俺は、ここに居る。
 
じゃあ、またな。