笑ってる?

創作サイト【神々】の日記

春の陽のもと読了

さわやかで、少し肌寒い秋の陽。
晴れ上がって心地よいのだけれど、来るべき冬を予感させるもの悲しさを含んだ、そんな一日のように物語は始まりまして。江戸の人々の生きる風景を、美しいものも美しくないものも淡々と描き出してゆきます。それは淡々としている分だけ、読む方の心しだいで美しくも醜くもなりまして。
やがてふわふわと漂っていた物語は、少しづつ流れ出してゆきます。
周りを包んでいた穏やかな日常は徐々に薄れてゆき、やがて勢いを停められなくなった物語は怒涛のように加速度を増し、いつしか大嵐となって全てを巻き込んでゆきます。もう、息をつくことさえ忘れてしまい、様々な人々の生き様を離れ、最後はふたりの男の人生に焦点を結びます。
そして、あっけない幕切れ。
まるで川の流れが海へ出たことで、ふっつりと勢いを失ったかのようなあっさりとした、しかし小春日和の穏やかな風のように、物語は終わりを迎えます。読んでいる途中から、「これは」と言う期待感があったのですが、読み終わったあとの、ほうとため息をついて穏やかに微笑むことの出来る読後感にはやられました。
竹光侍
機会があれば、是非ご一読を。