笑ってる?

創作サイト【神々】の日記

特に興味はない

単車に乗り始めたきっかけと言うものがありまして。
俺の場合はシンプルで、女の子にモテたかったから。今でこそ、女の子をバイクの後ろに乗せて海辺で愛を語るなんてのは、『近藤真彦以外には許されない行為』だと知ってますが、当時はそんな法律を知りませんから、もう、目くるめく妄想してたんですね。
脳内でハイティーンブギなドラマを組み立てていたんです。
ハイティーンブギ、見たことないけど。
 
今日、いつものように単車をいじってますと、女性に話しかけられました。
「すごく大きなバイクね。これ、何ccあるんですか?」
「1200ccですよ」
ま、一般的な会話です。
単車乗りの間では、こういう風に『このバイク何cc?』と聞いてくる人々を総称して、『ナンシー』と呼んでます。高速のパーキングや道の駅で話しかけてくるナンシー(圧倒的に中高年の男性が多い)を、鬱陶しく思いながらも希少動物として扱い、苦笑いするのです。
ところが今日は、いつもとは違った展開になりまして。
「へぇ、ステキねぇ」
「ありがとうございます」
「ワタシね、いつも思ってるのよ。バイクに乗ってる人ってステキだなぁって」
「そ、そうですか。ありがとうございます」
お察しの通り、かなり高齢の女性なんですが、それでもここまで手放しで褒められるとうれしいものです。ものすげぇ漠然とした褒め方ですが、目を細めて俺と単車を等分に見ながら、「ステキね」と連発するものですから、かみさん、うれしいやら困ったやら。
頭をポリポリかきながら、どうしたものかと思ってると。
彼女は突然、衝撃のセリフを吐きました。
 
 
 
 
 
「それで? このバイクは何cc?」
 
「……せ、せんにひゃくです」
小さく答えた俺は、足早にその場を離れたのでした。
頭の中でリフレインする「ステキねぇ」と言う言葉を噛み締めながら。