笑ってる?

創作サイト【神々】の日記

じっちゃんの名にかけて

まこと(整骨院の若い衆)が髪を切ったんですよ。
中村獅童みたいなカンジに。横がかなり短くて後ろが少し残ってて、上が長めの、かなりかっこいい髪型です。


かく言う俺も、ここんとこだいぶん伸びてきたんで「髪を切りたいなぁ」と思ってたんですが、ココで切ったら、も、ナニ言われるか分かったもんじゃないです。


「真似っこ動物」か、「真似っ子メグちゃん」くらいの屈辱的なあだ名は、確実に覚悟しなきゃならないでしょうね。ま、まことが魔女っ子メグちゃんを知ってるかどうかは微妙ですが。


当然そんなのはゴメンなんで、もうしばらくは1㍉たりとも髪の毛を短くできません。完全にタイミングを逸しました。こうなりゃ、何があったって切りませんよ。ビバ、ロン毛。言い過ぎた、折見て切りたい。


とまあ、そんなこんなで悔しいもんで、いつにも増してまことをいじめてたんですよ。いじめたって柳に風なんですがね。で、いじめた方ってのは、いじめた事実を比較的早く忘れるものでしょう?


俺もすっかり忘れてまして、そのうち携帯の残り電池がなくなってることに気づき、「ありゃ、電池がねえ」なんて言ったと思ってくださいな。


すかさずまこと、「ボクチンの充電器使ってイイですよ」なんて優しい言葉をかけてくれます。ああ、俺はなんて駄目な人間なんだろう。なんて心の狭い男なんだろう。


そんな反省で胸をいっぱいにしながら、ありがたく充電器を借りました。んで、まことは学校に、俺は仕事を続けます。


夜になって最後の患者さんを送り出したあと、鍵を閉めてさあ、うちに帰ってビールでも引っ掛けるか。思いながら充電器から携帯をはずしますと。


ブラックアウト。


も、見事にうんともすんとも言いません。完全にぶっ壊れました。ええ、確実に。完璧に。回復見込み、皆無。


ま、それは良いんですよ。携帯なんていくらもするもんじゃないし、とっとと買い替えりゃ良いんですから。問題はそんなことじゃなくて、この事態をあの男が予想していたか、いなかったか。


予想してたとしたら、これは完全に説教対象。ゲンコツ、ケリ、ワルクチ、イジワルの波状攻撃を浴びせなくてはなりません。だけど、予想してなかったとしたら、彼は好意で充電器を貸してくれたわけで、感謝こそすれ、怒るスジの話じゃなくなります。


はからずしもココで、俺の人間としての器が試されるわけですよ。


プルルルルル。
あれ?
整骨院の電話が鳴ってますね。誰だろう?
受話器を取りますってえと、休み時間(6:00〜7:30と7:40〜9:10の二時間授業なんですな)のまこと君からです。


「先生、携帯につながりませんよ?」
「うむ。充電器が合わなかったようだ。ぶっ壊れちゃったよ」
「ありゃ、そうですか。すいません。俺が余計なことしちゃいましたね?」


ああ、自分を恥じましたよ、俺は。こんなかわいい後輩が、俺のことを陥れるなんて、一瞬でも考えた俺という男は、いったいなんと言う……


「そんな気もしたんですけどね。きゃははは」


なんと言う鋭い推理力を持っているんだろう!


とりあえず、明日説教。