短編「The cat master」第4話「猫使いと詩人」をお届けします。
派手な展開はありませんが、細かい謎の一部が少しばかり解き明かされるので、ま、待たせただけのことはあったんじゃないかと自負しております。気に入らなくても、俺のせいじゃないけどね。
楽しんでいただければ、幸いです。
で。
さっき、まこと(整骨院の若い衆)から電話がありまして。
「あ、先生ですか?」
「おう、どした?」
「いまね、帰ってくるときに、信号待ちで止まってたんですよ。環七と6号のとこで」
「おう、で?」
「そしたらね、後ろから来たスズキのSV1000かなんかの人が、停まるなり言うんですよ。『めちゃくちゃ早いですねー』って。もう、嬉しくて、でも、そんなこと言われたら、ゼッタイ前に出せないじゃないですか? 思わずかっ飛ばしましたよ」
「まーそりゃ基本だな。でも、ウチの嫁には聞かせないほうがいいぞ? 事故るなよって、延々説教されるから。それで? 点にしたか?」
「はい、もちろんっす。ミラーの点にしました。そんで、嬉しかったんだけど、この喜びをわかってくれる人がいないんで、思わず先生に電話したんですよ」
「おう、正解だ。俺様はよくわかるぞ? よかったな? これでおまえもまたひとつ、大人の階段上ったな?」
「うい〜っす。それじゃ、また明日整骨院で。や〜よかった。先生なら判ってくれると思ったんだ。おやすみなさ〜い」
う〜ん、いや、そう言ってくれるのは嬉しいンだけどさ。
「よろしくおねがいします」って散々言われた、
おまえの母さんに、なんて謝ればいいかな、俺。