午後、まこと(整骨院の若い衆)がいなかったんで、3時から8時過ぎまで、一秒の休みもなく、働いたわけです。んで、帰ってきて風呂に入り、ふうと一息つきますってぇと。
なんですか、この不思議なメカは?
「あーそれ、かぁちゃんがね、買ったんだって。で、お嫁さんに取られちゃうから、とりあえずほとぼりが冷めるまで、うちで預かってくれって持ってきたのよ」
とても、「ほとぼりが冷めるまで預かる」とか、そんなキナ臭い話になるようなものには見えませんが? これ、マイクですよね? それも、いろいろなスウィッチがついているところをみると、家庭用カラオケマイクのように見えるんですが?
「そう、TVにつないで使うやつ」
まあ、個人的には若干、被害妄想っぽい気もしますが、ほかのおうちのことには首を突っ込まないのが賢明です。たとえ義理の母親と義理の弟でもね。
と、嫁さん。
なにやらセッティングを始めました。う〜む、ビディオの予約も微妙なくせに、なかなかやるじゃないか。腕を上げたな。何の腕かはわからんが。
ま、こっちはもう腹が減って仕方ないんで、嫁の動向になんぞ構っちゃいられません。用意された晩飯を、ありがたくいただくことにします。もぐもぐ。うむ、うまい。
「あぁ〜川の流れのよ〜に〜♪」
ほほう、美空ひばりですか。演歌とは珍しいですね。ビールを飲みながら、楽しくカラオケ。いいじゃないですか。俺はこのマーボー豆腐をやっつけるほうが大事なんで、喝采を送っている暇はありませんが、楽しんでください。
「これねー、ビデオカメラの映像を、カラオケの背景に取り込めるんだよ」
「へー、そーなんだ。もぐもぐ。うん、マーボー美味いじゃん。油少なくして、ダイエタリーな所も、評価できるな。そーだ、昨日買ってきた温泉卵があったはずだ。あれも食おう」
と、楽しく晩飯を食ってたわけです。すると、また、別の曲のイントロが。お、これは「夢芝居」。なんだ? 今日は演歌三昧なのか? と、不審に思いつつ、食事の手を止めて、TVを見ます。
夢芝居のイントロが流れる中、画面に映っているのは、京都太秦映画村を闊歩する、芸者姿の俺様。視線を移せば、してやったりな顔の嫁。にやりと笑って。
「ぴったりっでしょ? 夢芝居」
うん、いいから、ビディオを止めなさい。
「母ちゃんはね、美空ひばりに似てるって言ってた」
うん、似てないよ。つーか、母ちゃんにも見せたのか?
「けど、私は梅沢富美男のほうが似てると思う」
うん、軽く手首切りたくなってきたよ、僕。
いや、ネタでやってるんだし、ネタだってわかってる人には、逆にどうぞ見てくれと思うんですが、義理の母親に見られて、しかもほめられて(?)るってのがね。普通にうれしくないです。
そんなこんなで、こっ恥ずかしい思いに赤面している俺を尻目に、彼女は早くも三曲目に突入です。背景は移り変わり、やっと白塗りじゃない俺が登場しました。
やれやれと一安心していると、銀閣寺をバックにさわやかに立つ俺の映像に、オーバーラップして浮かんでくる曲名。
マツケンサンバⅡ
僕、もう寝ます。