否定される。
理論的に、あるいは感情的に。
スジもなにもなく、ただ、全精力を込めての根本的な否定。こちらの納得とは数億光年隔たった、しかし、ゆるぎない否定。はじめに否定ありきの否定。思わず説得されそうな否定。
すべての否定を、さらに否定するのではなく。
すべての否定を、発言者の気持ちさえ汲みながら飲み込んで。
それでも、思った道を貫く。
それでも、心のままに生きる。
そうすることによって生じる、軋轢、不具合、マイナス感情。そのすべてを、丸ごと飲み込んで生きてゆく。それがまあ、人が生きるってことなんだよ。たぶん、だけどな。
相手に叫びたい「たぶん正しい言い分」を、まあ、飲み込んでみよう。んで、もしかしたら「自分こそ、それじゃないのか？」と疑ってみよう。そしたら意外と、何でも許せるもんだ。
いいから、黙って歩けよ。
他のすべては、きっと後からついてくるから。ついて来ないなら、ついて来ないという事実、それさえも受け入れればいいだけだろ？ そして、ひとりで歩けばいいだけのことだろう？
今生きてるこの瞬間。
もう、すでに人生の本番なんだ。
あとで、とか、いずれとかは。
あのな。
本気で、ナイんだよ。
誰もおまえに、生きてくれとも、死んでくれとも頼んでない。
いや、聞いたことがあると思うかもしれないが。
聞いたことがあっても、心配しなくていい。
そんなセリフを吐けるのは、バカかてめえの命を賭けてるか。
その、どっちかだから。
バカの言うことは流せばいいし、命を賭けて言ってくれるなら……
そんなヤツがそばにいるなら、世界最高の幸せモノだ。
出来るなら今からでも。
思ったように生きたほうがいい。
それが間違ってるとか正しいとか。
あのさ。
すげえ、有利な勝負だと思わないか？
自分が正しいと思ったら。
死ぬ瞬間に、正しいと笑えたら。
もう、こっちの勝ちなんだぜ？
むしろ、勝負にさえならない。
いま、おまえを縛るしがらみ。
いま、おまえを歩き出させないモノ。
いま、おまえを前に行かせないすべて。
それがどれだけ重くても。
否定も肯定もせず。
棄てないで、投げないで。
ずるかろうが、卑怯だろうが、すべてを抱えて。
もう、歩き出してもいいんじゃないか？
それでも保険が要るんなら。
ここまで言ってもわからずに、保障が欲しいなら。
わかった、俺が保障してやる。
それにどれだけ意味があるかはともかく。
俺がケツを持ってやる。
だから、文句言いながらでもいいから。
歩け、バカ。
