笑ってる?

創作サイト【神々】の日記

花火と英語

土曜日に手賀沼の花火大会がありまして。
例年通り一晩だけ開放されるうちの屋上で、水筒に入れた焼酎を飲みながら花火を見ます。


こんな感じ。つーか花火の写真は難しい。
すると、最後のころになって、一階上に住んでるDとKちゃんが顔を出しまして。Dは英語の先生をやってる、41歳のアメリカ人です。彼女のKちゃんは日本人。
せっかく会えたので、『今から俺んトコで呑まないか?』と誘うと、彼女のKちゃんが『Dがアサッテからアメリカに帰省するから、その準備があるの』と言うので、残念ながら宴会ならず。
 
ところが、戻って何分もしないうちに、玄関チャイムが鳴りまして。
開けてみるとDとKちゃん。
「さっきの話をDにしたら『なんで行かないんだ』って言うの。一緒に飲みたかったみたい。いきなり来て申し訳ないんだけど」
「なに言ってんだ。いいから入りなよ」
うれしい宴会のはじまりです。むしろ俺を喜ばせるための演出なんじゃないだろうか(勘ぐり過ぎです)。
 

んでチューハイ片手にやってきたD&Kちゃんと飲み始めたんですが。
Dがとにかく面白い。
ヤツは日本語が全然ダメなので、俺はつたない英語と身振り手振り、表情を目いっぱい使って話すんですが、そんなんでもなんとか意味は通じるんですね。
最初は意味を正確に伝えようと必死になるも、そんなことより冗談が言いたくて、文法フルシカトで単語と表情を駆使し、オチを考えます。Dがゲラゲラ笑うから、うれしくなって身振り手振りでバカ話。
以下、実際はこんなに流暢に運んでないんですが、読みやすくするために会話を整えて書きます。
 
「かみ、夏はバイクに乗るのか?」
「乗るよ。新しいバイクを買ったんだ。速いぜ」
「どこに行くんだ?」
「山口だ」
「それは金沢の近くか」
「なんで金沢なんて知ってるんだおめ。ニア九州だよ」
「南か? 北か?」
「南だ。そういえば去年さ、九州に行く途中で台風を避けて琵琶湖のあたりで一泊したんだけどさ」
「それは金沢の近くか」
「金沢から離れろ。それでな、ハイウェイホテルってのに泊まったんだけど、なんとそこには酒が売ってなかったんだよ」
「オー! なんてpiti(哀れ)な話なんだ。コンビにはなかったのか?」
「日本のハイウェイは簡単に降りられないんだよ。ノーコンビニだ」
「オーウ!」
 
我が事のように顔をしかめて頭を抱えるDに大笑い。プロレスラーみたいなでかい身体と、くりっとした目のアンバランスがかわいいから、そういう悲しそうな姿が妙におかしいんです。
 
「大丈夫だ、次の日しこたま呑んだから」
「オゥ、それは良かった」
「この間は能登に行ったんだぞ」
「それは南か、北か」
「おめ、ここでこそ『金沢』って言えよ! そのために振ったのに」
「金沢行ったことがない」
「じゃなんで金沢金沢うるせぇんだよ、まったく。能登では毎日、すし屋に行ってたんだ」
「オー! 寿司は好きだ。かみは何が好きだ。Kはイクラが好きなんだ」
「金沢シカトかよ。俺は貝が好きだ。シェルで通じるのかな」
「私はトロが好きだけど、高いからレギュラーを喰ってる」
「レギュラー? あぁ、赤身か。つかおめ、ガソリンじゃねーんだから」
「ホッカイドーの小樽でも食べたけど、柏のクルクルとセイムだったよ」
「柏の回転寿司と同じ? おめ、ダメな店に入ったな」
 
ここでKちゃんが
 
「Dは寿司は全部セイムなんだよね。もったいないから食べさせない」
 
爆笑しながら、ガンガン呑んだくれます。
うちの秘蔵(?)の梅ワインを出すと、『あまいね』言いながらグビグビ呑み、作り方を聞いてきます。教えると熱心に聞いてるから『お、こいつも作ってみるのかな』と思ってたら、Kちゃんを振り返って。
 
「K、覚えたかい?」
「あたしかよ! 自分で作れよ!」
 
Kちゃんに突っ込まれてもDはニコニコ。それを見て俺やNも大笑い。
 
「かみ、そこのヤクザショップは時々トラブルがあって楽しいな」
「ヤクザショップて。俺はでかいトラブル見たことないよ」
「私は見たぞ。朝、ミソスープのんでたら、外がうるさいから見てみたんだ。日本の警察はえらいな。ヤクザに殴られても『まぁまぁ』言って押さえてる。アメリカならすぐに取り押さえられる」
「ユーの国はガンでバン!だからなぁ」
「そそそそ」
「変な日本語覚えるな。そこは、『そう』でいいんだよ」
 
こんな感じで、ヤクザと右翼の違いとか、Dが夜中に通風で病院に行った話とか、途切れることなく延々と宴が続きました。すると11:00ころだったでしょうか。Dのまぶたがとろんとしてきます。
なんだ、酔っ払ったのか? 思っているとKちゃんが
 
「Dは、いつも10時ころ寝ちゃうの」
「なにー! チャイルドかよ、D」
「その代わり、5:00にはおきてるけど」
「ユー、オールドマンだな、D」
「アサズバ!」
「朝からなに見てるんだよ! いいから早く日本語覚えろよ」
「日本語、難しい」
「でも、日本語覚えたら、ヤクザのケンカがもっと面白くなるぞ」
「日本語、頑張る」
 
結局、11:00をちょっと回ったあたりで、眠くなったDと明日仕事のKちゃんが帰ってゆきます。気のいいデカブツのアメリカ人を見送りながら『やっぱり、酒飲みは世界共通だな』と、なんだか楽しくなってしまいました。
D、アメリカから帰ってきたら、また呑もうぜ!