笑ってる?

創作サイト【神々】の日記

浅草クエスト

noreturnrydeen2005-04-18

俺とまこと*1が、上司と部下としては、異常なほど、むしろ『お前ら出来てるんじゃねえの?』ってくらい仲良しなのは、全日本的にも周知の事実なんですが。
その事実を補強するかのごとく、むしろ、『同性愛説を広めよう』くらいの意気込みで、そんな意気込みは、これっぱかしもありませんが、土曜日、午前中の仕事が終わってから、ふたりで遊びに出たんですよ。
まことが、浅草寺に行ったことがないってンで。
「GIとか、いっぱいいるんですかね?」
「お前が浅草寺にどんな幻想を抱くのも勝手だが、間違いなく、あそこに居る外人さんは、ただの観光客だ。軍人であふれかえってるなんて事はないから、変な期待を持つな」
「え〜! でも、ほら、アメ横も近いし」
アメ横で軍服を買うのは、日本人のミリタリーマニアだけ。アメリカ人はどっちかって言うと、品物を卸してるほうだってばよ」
「なんだ、つまんね」
「お前の頭の中の浅草の方が、確かに面白そうだな」
 
バカ話をしながら、とりあえず浅草に到着。
まずはカッパ橋商店街を目指して歩きます。
と。
「すみません、ちょっといいですか?」
なんだ、宗教か? と思いつつ振り替えると、屈強な男が三人、俺たちを囲むように近寄ってきます。いぶかしげな顔をする俺とまことの前で、男のひとりが、首から下げたモノをこれ見よがしに提示しまして。
「警察のものですが、ちょっと話を聞かせてください」
頭ンなか?マークだらけのまま、言われたように道の端によりますと、そのオマワリ、早速、俺の腰を指差して言います。
「それ、ナイフだよね?」
俺の腰には、写真のような十徳ナイフがぶら下がっていまして。バイクで出かけたときとか、日常のちょっとしたことに凄く役立つので、すぐに取り出せるように、自作のホルダーでさげてるんです。
が、俺の中でこれは『ナイフ』なんて代物ではないんです。ホームセンターで売ってて、刃渡り10センチもないような、可愛い『マルティツール』なんですよ。
「あー、確かにその刃渡りなら、銃刀法違反ではないんだけど、それでもそうやって持ち歩くのは、軽犯罪法に引っかかるんだよね」
「そーなんスか。んじゃ、いま仕舞いますよ」
「どこから来たの? 名前は? 今日は何しに?」
うるせえ質問が、矢継ぎ早に繰り出されますが、酔っ払ってなかったし、まこともいたので、自制してまじめに答えます。そのうち、まことのほうも身体検査されて、ここはどこのハーレムなんだ?
オマワリの方も、さすがにこんなことで職務質問するのが後ろめたいのか、イイワケするかのように説明します。
「いやぁ、最近、ナイフを使った傷害事件が頻発してるんだよね」
十徳ナイフでケンカするやつもいないでしょうが、向こうも仕事だし、絡みたいのをこらえて、素直に言うことを聞きました。
 
ようやく開放されまして、苦笑しながらふたり、カッパ橋へ向かいます。まあ、今日は偵察だけなんで、有名な道具街に何があるのかってのを見にきただけなんですが、道すがら、どうしても話は職務質問の方へ。
「いや、悪かったな、まこと。俺がナイフなんかぶら下げてたから」
「いえ、とんでもない。でも、アレですよね。俺ら今日は、わりとおとなしめのカッコしてますからね。普段のカッコだったら、もう少しうるさかったかもしれないですね?」
「ああ、まーな」
言いながら、カッパ橋を見終わり、浅草寺を見て、上野に向かいます。ここまで来て、アメ横とバイク街に行かないのは、神をも恐れぬ不届きな行為ですから。
と。
なにやら表が騒がしい。選挙カーでも居るのかと思ったら、どうやら後ろからやってきたワンボックスが、スピーカーでわめいています。屋根には赤灯まわしながら。
「ンだ? まこと。おめ、なんか違反したか?」
「いや、何もしてない……と思うんですけど。なんだろ?」
しぶしぶと車を路肩に停め、オマワリが来るのを待ちます。
そこで、驚愕の事実に気づいた俺は、ま、別に、たいして驚愕な事実でもないんですが、オマワリが車の横に来るなり、ヒトコトもしゃべらせずに言いました。
「さっきはどうも。今度はなんスか?」
「え……あ……ああ、君たちか!」
そう、来たオマワリはさっき俺らが職務質問されたヤツラだったんですね。明らかに不機嫌そうな顔でサングラス越しににらんでる俺とまことに、彼らはバツの悪そうな顔であやまります。
「いや、ごめんごめん。行っていいよ」
「俺ら、なんか悪いことしました? なんで、停められたんですか?」
「いや、いいんだ。それじゃあ、気をつけて」
 
よくねーよ。
と思ったときにはもう、彼らはワンボックスに引き上げてます。呆気にとられて、彼らが去るのを見届けた後、そのまま上野を目指しながら、車内で俺とまことは少し凹み気味。
「ナイフ、関係なかったみたいですね」
「俺ら、そんなに怪しいか?」
「いやぁ、全然、普通だと思いますけど」
「だよなー? う〜ん、いったい、何が悪かったんだろう? まことの目つきじゃねえのか?」
「何言ってんスか。も、間違いなく先生ですよ」
「つーかよー、アレが婦警だったら、間違いなく運命の出会いなんだがな。ヤロウに偶然再会しても、うれしくねえっつんだよなぁ?」
「や、そこには同意できませんが。でも、アレですね、なかなかファンキーな街ですね。こんど、スーツ着て、もう一回リベンジしましょうよ、浅草に」
「そんなリベンジはせん」
言いながら、到着しました、上野。
駅の構内にある、科学おもちゃの専門店で買い物しまして、これは次回にでも見せてあげる。すげー面白いコマ買ったから。
おもちゃ屋さんのあとは、アメ横へ繰り出しまして。
いやー、ちょっと来ないうちにずいぶん変わったね、アメ横。ほとんどレザーとシルバーのお店で、いくら俺がそう言うのが好きでも、さすがに全部まわると、少々、食傷気味になりました。
 
アメ横ですから、当然、中田商店にも寄りまして。
ブーツショップで見たガンシブなレザーブーツと、中田商店デザートブーツのどっちを買おうかなんて悩んでると、まことのうしろになにやら妖しい人影。
急いでまことを引っ張りますと、その男はこちらになど目もくれず、並ぶミリタリー商品をひとつひとつ、じっくり吟味していきます。
目ぇキラキラさせながら、軍服だのミリタリーグッズを手に取るその姿は、『いったい今、どこで戦争をしてるんですか?』ってくらいの全身フル装備。ベストの弾薬入れには、きちんと弾丸まで収まってます。
そして、その表情は、まさに、『至福』。
マタタビの前の猫でも、もう少し自制してると思いますよ、や、マジで。彼が去ったあと、俺とまことは、笑いをかみ殺しながら目を合わせました。
「つーかよ、俺たちがダメなら、あいつぜって、浅草行けないな?」
「たりまえッスよ。俺なら職質飛ばして、即、逮捕しますね」
「あいつぜって、コンバットナイフ持ってるよな?」
「あー、間違いないスね」
「バッカだなぁ」
 
 
でも、そのあと行ったバイク街で、ふと隣のまことを見たら、彼と同じ目つきで、パーツをあさってました。
たぶん、俺も。
 
明日に続く

*1:整骨院の若い衆