俺は寝ないんです。
寝る時間が、非常に少ないんですね。だいたい3時間寝れば充分。ものすげえよく寝たなつーときで6時間。2時間とかでも、結構平気です。とまあ、今でこそ睡眠時間の短さを誇る俺ですが。
みなさまご同様、学生時分は寝坊くた小僧でした。
んで、そんな時、オフクロの俺を起こすセリフってのが
「早く起きな！ 目ン玉ぁ腐っちゃうよ！」
でして、医道に進んだ今となっては知識がありますから、もし一緒に暮らしてたとしても『なに言ってるんだこの狂人』くらいのイキオイで、颯爽と二度寝を決め込むでしょうが、当時は、小学校低学年ですからね。
一抹の不安を隠しきれずに、しぶしぶながら起きてたわけです。
カワイイな俺。
そんな俺も、五年生ころになって、目が悪くなってきました。
したらもう、オフクロ。鬼の首とったような顔で
「ほれ、ごらん。朝ちゃんと起きないから、目が腐っちゃったんだ」
なんて、とんでもない与太を飛ばしやがりまして。
幼い俺は、心に傷を負ったわけです。
でね、今朝、起きた瞬間に一連のこんな記憶を、ふと思い出したんですが。ついでに、すげえ大事なことを思い出しまして。俺の視力が悪くなったのは、読書のせいなんです。
正確に言うと、暗いところで読書してたからなんです。
とにかく本が好きで、こづかいがないので、学校の図書館と市立図書館と、県立図書館の３館で借りてきた本を、毎日毎日読み漁ってたんですよ。とにかく量が多かったんで、学校だろうが家だろうが、ひたすら読んでまして。
それでも読み終わらない。
だけど、続きは気になる。と言うことで当然、寝床でも読みます。すると、俺の部屋の電気がついてるのを不審に思ったオフクロが、扉を開けて怒鳴り込んでくるんです。
「早く寝な！」
「コレ読んだら」
「早く寝な」
「だから」
「早く寝な」
「わかったよ……」
とオフクロをやり過ごしますと、勉強机のライトを持って、布団をかぶっちゃ続きを読んでまして。そんなことやってれば、目が悪くなるのも当たり前ですよ。むしろ、俺の目を悪くした犯人はオフクロです。
じっちゃんの名に賭けて。漁師だったけど。
今週末、親父に線香上げに帰ろうと思ってるんですが、そこで、じっくりオフクロをいじめてやろうと思います。
ああ、大丈夫。
お母さんかわいそうとか、カケラも思わなくていいです。
ウチのオフクロ、バタフライナイフの名手*1ですから。
むしろこっちが命がけ。
*1:横浜で働いてたころ、米兵に教えてもらったそうです
