笑ってる?

創作サイト【神々】の日記

夢の理由

今朝、夢を見まして。


東南アジアのどこかにある食堂。
ガヤガヤ騒然とした店内の片隅で、男がふたり食事をしている。ボウズ頭の肉厚な男はガツガツとキーマカレーをかき込み、向かいに座った髪の長い線の細い男が、それを呆れた様子で眺めている。ボウズの男はやがて食べ終わると、器を持ってウエイターを呼び止めた。
「おかわり! あとビール五本!」
「かみさん、まだ喰うんですか?」
「うっせーなゴウ! カレーをおかわりするのは、ヒトとして当然だろう」
「まあ良いですけどね……あ、あのウエイター、伝票にチェック入れてない」
なぜか日本式の伝票には、キーマカレーの欄にチェックがひとつしか入ってなかった。そしてビールの欄にもチェックが入っていない。すると、かみと呼ばれたボウズ頭の男は、伝票に備え付けてあったボールペンで、チェック欄にTの字と正の字を書いた。
やがてビール五本とカレーのおかわりが来て、かみはそれをガツガツと喰らう。ゴウと呼ばれた男は立ち上がり、「ちょっと様子を見てきます」と言うと、表に向かって歩き出した。何の様子だよ、と突っ込むこともなく、キーマカレーを堪能したかみは、伝票をつかんで立ち上がった。
 
厨房の横にある会計で、伝票を差し出す。
すると、受け取った色黒の日系三世が、不審な顔でかみを見た。
「アナタ、これに細工したね」
「なにをぅ! するわけないだろう! こんな安いのに!」
「知ってるよ、『正』って日本の字だ。アナタ細工した」
「しねーよ! ウエイターが書き忘れてたから、書き足してやっただけだ!」
「ウソね。あなた細工した」
「何の細工だっつーんだ!」
なぜ日系三世だとわかったのかも疑問に思わないまま、かみは大声で怒鳴る。すると、いつの間にか横に来ていたゴウが、ニヤニヤしながら「ははは、うっかりかみさんだ」と笑った。その笑いを見て、色黒の日系三世は突然、怒りの声を上げる。
「バカにした! アナタ、馬鹿にして笑った」
「いやいや、違うって! ゴウおめぇ笑うな! 勘違いされるだろ!」
しかしゴウはニヤニヤ笑いながら、男を指差して笑う。
「ほら、かみさん。またうっかりですよ。気をつけなくちゃ」
なんだ? と言いながら振り返ったかみの目に、男の構える拳銃の銃口が飛び込んできた。
「うわ、やべぇ! おいゴウ! マジで笑うなって!」
「きゃははははははっ!」
「バカにした……バカにした……」
何かに取り憑かれたかのようにブツブツとつぶやく色黒の男。
ケタケタと笑うゴウ。
かみは銃口をにらんだまま、アブラ汗をかく。
(くそ、ゴウめ空気読めつーんだよ。ヤバイ、ヤバイぞ。なにか武器になるものは……)
厨房にぶら下がった、鍋やおたまに視線を走らせる。
(くそ、どうする?)
かみの背中に、冷たい汗が一筋、つーっと流れた。
 
 
で、目が覚めたわけですが。
 
(問)
どうして、こんな夢を見たのでしょう?
 
(答)
昨日の晩ごはんが、キーマカレーだったから。
 
なんか自分の単純さに泣けてくる。