笑ってる?

創作サイト【神々】の日記

ロンリーアブ

昨日ね、ダチから電話がかかってきたんですよ。
「おう、かみ? あのよ、今日のまねえか?」
「ナオ(仮)よぉ、あのなぁ、今日は月曜だぞ? 週の初めだぞ? もちろん、行くよ」
「がははは、やっぱおまえ好きだ。んでよ、ダチも連れてくから、一緒に飲もうぜ。本職*1なんだけどよ。いいだろ?」
そんな楽しそうな話、逃す手はありません。
「いーよー」
つーわけで、仕事がはねてから、早速、柏へ繰り出しました。
と。
いきなり出来上がってるダチが、ハイテンションで迎えてくれます。
「がははは! イェー! かみぃ、楽しいなぁ?」
「いや、俺は今来たばっかだから。一滴も入ってねえウチから楽しいもクソもねえっつの」
そこで件(くだん)の本職のダチってのと挨拶しあいます。
「うぃ〜っす。かみです。よろしく」
「ど〜も〜。ケン(仮)です」
すかさずダチが、俺とケンちゃんの肩を抱いてわめきます。
「おうぅ、かみぃ、こいつよぉ、俺のよぅ、マブダチなんだよぉ」
「いいから、お前は黙ってろ。呑み過ぎだ、バカ。つーか、おめーがそんだけ酔っ払ってるのも珍しいな? 何時から呑んでるんだ?」
「あー9時」
「12時間呑んでるのか。そりゃ酔っ払うわな。ケンさんも?」
「あ、俺、ナオとタメだから。『さん』いらねーよ」
「んじゃ、俺ともタメか。マジ? カンロクありすぎだよ」
「老けてるってか?」
「そうとも言うな」
「がはははは」
で、速攻、仲良くなって、んじゃ呑みながら話すべってんで、居酒屋に行こうとすると、ベロベロのナオちゃん、ものすげえでかい声で。
「かみぃ、キャバクラ行っちゃうちゃう〜?」
「俺、晩飯喰ってねえんだよ。それに、ケンちゃんとも、ちっと話してぇしよ。まずは居酒屋行くべよ」
「お〜けぇ、わかった。それじゃあ、ここの二階ねぇ〜」
「おい! そこはキャバクラだ。とりあえず、俺の話を聞け!」
「俺の話うぉ聞けぇ〜♪」
「や、歌わんでいーから」
 
俺とナオの漫才に、ケンちゃんは苦笑。
結局、ナオに押し切られて、キャバクラへ入ります。と、いきなり店からボトルのおごり。この辺はさすがに本職さん。ナオが早速お姉ちゃんを口説いてるので、俺はケンちゃんと話します。
「かみ。こんどさ、俺に柔道教えてよ」
「ケンちゃん、いきなりだな。なんでよ?」
「いや、子供が柔道はじめてさ、見に行ってたら、そこの先生がやってみないかって言うんで、ちょっとやってみたんだ。そしたら、いつの間にか、試合組まれちゃって。こんど白帯の部で出るんだよ」
「へえ、そうなんだ。無茶な先生だなぁ」
「だから、なんか戦い方を教えてくれない? 俺、何にも知らないんだよ。二回しか練習してないから」
「うん、絶対無理だから。なんだよ、二回って。原付免許でトレーラー運転するようなもんじゃねーの。ケンちゃん、なんかスポーツやってなかったの?」
「やってたよ。8年前までプロボクサーだった」
「や、それはスポーツやってたとかのレベルじゃねーから。でもま、それなら試合度胸とかは心配ないだろうから、白帯同士なら、勝てるかも。できるだけ相手にぶら下がるようにして、疲れさせておいて、後半、知ってる技を出しまくるんだ。1ラウンド分だからできるべ?」
「なるほどねぇ。でも、知ってる技って言ってもなぁ」
「だーら、エリを取った手で、パンチ入れちゃえばいいじゃん。で、相手がそっちに気を取られた隙に、タックルとか。疲れてくる後半で、白帯相手なら、多分それでいけるよ」
「おー、そんなのもアリなんだ?」
「や、ホントはアリじゃねーけど、練習二回とかのヤツには、それくらいしかアドバイスがねー」
「ははは、だよなー? 俺も無謀だと思うんだけどさー」
 
なんて、お姉ちゃんそっちのけで話してると、ナオがヤキモチをやきます。
「なんだよおめーら、ふたりで仲良く話してるんじゃねーよ」
「いいから、おめえは、おねえちゃんと仲良くしてろ。俺らは格闘技談義に花を咲かしてっから」
「俺も背中に鬼の面貌(めん)が浮かぶぞ?」
「オーガか、おめーは。でもま、確かにナンも運動してないくせに、おめーのからだ、逆三角形だよな」
すかさずケンちゃん。
「俺も腹筋割れてるぞ〜」
横の女の子がケンちゃんの腹筋に触って、大声を上げます。
「なにこれー! すご〜い!」
「俺だって割れてるぞ!」
「ナオさんもすご〜い!」
一瞬の間。
 
 
その心に、優しさが少しでも残っているなら。
 
貴様ら、そんな目で俺を見るな。
 
今日から、腹筋やろうと思います。

*1:いわゆる、その筋の人ですね